時間について考える
最初に紹介するのは、「モモ」(岩波文庫)はミヒャエル・エンデの代表作。ファンタジーな児童文学ながら、哲学的要素も散りばめられているから、大人も楽しめる物語だ。
特に「時間」について。主要人物の道路掃除夫のペッポが、道路掃除の仕事についてこんなことを言っている。
「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸(いき)のことだけ、つぎのひとはきのことだけ考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」
今を生きよ。先のことを考えて焦ってやっても、終わらないという気持ちは常に自分を襲う。それは、日常の小さなできごとにも当てはまるのではないか。
そして、時間の効能については、主人公モモの説明が表している。
小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。なあんだ、そんなこと、とみなさんは言うでしょうね。
(中略)彼女はただじっとすわって、注意深く聞いているだけです。
じっと聞く、確かに簡単なことだ。しかしながら、「忙しい」「時間がない」と言い訳をしている現代社会を生きる私達は、モモのように聞くことはできるだろうか。
社会の大きな変革期にいる昨今、私達はもう一度「何に時間を使うか」、もっといえば「何を大切にしたいか」についてもう一度考える時間をもちたいものだ。